古物商許可は個人と法人どっち?違い・書類・法人化

古物商許可を個人で取るか法人で取るかは、次の一点でほぼ決まります。今は1人で小さく始めるなら「個人」、従業員を雇う・利益が大きくなる・企業間取引の信用が要るなら「法人」。許可の申請手数料はどちらも全国一律19,000円で同額ですが、法人は提出書類が役員全員+管理者全員の人数分にふくらみます。そして最重要ポイントが1つ——個人で取った許可を、あとから法人へそのまま引き継ぐことはできません。法人化するなら法人名義で新規に取り直しが必要です(古物営業法)。

手数料・期間・必要書類は2026年7月時点の一般的な目安です。制度は改正され、提出書類や運用の細部は管轄によって異なります。最終的な要件は必ず申請先の警察署(生活安全課 古物担当)=公安委員会、税務の分岐は税理士・税務署でご確認ください。申請書の書き方・手続きの流れそのものは古物商許可の申請で解説しています。

個人と法人、どっちで取るべき? まず3秒で判定

迷ったときの判断軸はシンプルです。1人で小さく始めたい・とにかく早く許可がほしいなら個人従業員を雇う・利益が安定して大きくなる見込み・企業間取引で信用を見られるなら法人。許可自体に「個人用」「法人用」という強さの差はなく、できること(古物の売買)は同じです。違うのは申請の手間・税金・信用・事業の引き継ぎ方だけ。実務では「まず個人で始め、軌道に乗ったら法人化」も一般的ですが、その場合は後述のとおり法人での取り直しが必要になる点を先に知っておいてください。

下のチェックで、自分がどちら寄りかを確かめられます。両方に当てはまる項目があるなら、税負担や将来の体制を軸に決めるのが実務的です。

個人向き・法人向き 判定チェック
こんな人は「個人」 こんな人は「法人」
今は自分1人で始めたい 従業員を雇う・複数の営業所を持つ
とにかく早く・安く許可がほしい 年間の利益が大きくなる見込みがある
副業・小規模でまず試したい 企業間取引・継続仕入で相手に信用を見られる
書類の手間を最小にしたい 将来の事業承継・売却も視野に入れる

「個人事業主として始めるか、副業として始めるか」で迷う場合は古物商を副業で始める、開業全体の流れは古物商の開業ガイドを合わせてご覧ください。本ページは「個人か法人か」の選択に絞って掘り下げます。

何がどう違うのか ― 個人と法人の早見表

個人と法人の違いは、①申請の手間(書類量)②税金③信用④事業の引き継ぎ方の4点に集約されます。申請手数料はどちらも19,000円で同額、標準処理期間も土日祝を除いて約40日が目安と大きく変わりません。差が出るのは、法人は役員全員分の書類がいる分だけ準備に時間と手間がかかること、そして利益が大きくなるほど法人税の一定税率が有利に働きやすいことです。逆に利益が小さいうちは、個人の身軽さと低い税率帯のほうが向きます。

古物商許可 個人取得 vs 法人取得(早見)
項目 個人で取得 法人で取得
申請手数料 19,000円 19,000円(同額)
標準処理期間の目安 約40日(土日祝除く) 約40日〜(書類が多く準備に時間がかかりやすい)
書類をそろえる対象 本人+管理者(兼ねれば1人分) 役員全員+管理者全員分
法人だけに要る書類 不要 定款の写し・登記事項証明書 ほか
税金 所得税(累進・所得が大きいほど高率) 法人税(おおむね一定税率)
取引先からの信用 個人名での取引 法人名で取引でき信用を得やすい場面がある
事業の引き継ぎ 本人ありき。廃業・相続時は原則あらためて手続き 代表が代わっても法人として継続・株式譲渡で承継しやすい

手数料は不許可・取下げでも返還されません。処理期間・必要書類は管轄の警察署(公安委員会)によって細部が異なります。制度の一次情報は福岡県警察の古物商許可申請の案内で確認できます(他県は各都道府県警の窓口へ)。税率の帯や有利・不利の分岐は個別事情で変わるため、金額の断定は避け、税理士への相談を前提にしてください。

必要書類の違い ― 法人は「役員全員×管理者」で増える

申請の重さを決めるのは、ほぼ書類の量です。個人はシンプルで、本人分(管理者を兼ねれば1人分)の書類でそろいます。一方法人は、役員全員と管理者全員について同じ一式を集めるため、役員が多いほど準備が大変です。さらに法人だけに必要なのが定款の写しと登記事項証明書。注意したいのは「身分証明書」で、これは運転免許証ではなく本籍地の市区町村が発行する公的書類(破産手続や後見の有無を証明するもの)を指します。混同しやすいので、取得前に何を集めるか整理しておくと差し戻しを防げます。

個人・法人で必要になる書類の違い(代表例)
書類 個人 法人
許可申請書 ○(個人用の様式) ○(法人用の様式)
住民票(本籍記載・マイナンバー記載なし) 本人+管理者 役員全員+管理者
身分証明書(本籍地の市区町村で取得) 本人+管理者 役員全員+管理者
略歴書(最近5年分の職歴など) 本人+管理者 役員全員+管理者
誓約書(欠格事由に当たらない旨) 本人+管理者 役員全員+管理者
定款の写し(事業目的の記載が必要) 不要
登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 不要
営業所の使用承諾書・URLの使用権疎明(該当時) 該当時 該当時

「登記されていないことの証明書」など、上表以外の書類が求められる管轄もあります。役員・管理者の範囲や様式は都道府県で細かく異なるため、集め始める前に必ず管轄警察署の古物担当へ事前相談し、ひな型と必要一覧を受け取ってください。書類の書き方・添付の詳細は古物商許可の申請、管理者の要件は古物商の管理者で解説しています。

【法人の要注意】定款の事業目的に古物が入っているか

法人申請でいちばんつまずくのがここです。定款の「事業目的」に古物の売買を営む趣旨が書かれていないと、原則として許可は下りません。「古物営業法に基づく古物商」「古物の売買」など、古物を扱うことが分かる文言が必要です。未記載のまま気づくと、定款変更(株主総会の決議)→ 変更登記という手戻りが発生し、その分の時間と費用(登録免許税など)がかかります。これから会社を設立するなら、設立時の定款に最初から目的を入れておくのが二度手間を防ぐ最善策です。既存の会社で申請するなら、まず現在の定款・登記の目的欄を確認してください。

目的欄のチェックと対応は、次の順で進めるとスムーズです。いずれも判断に迷う点は管轄警察署と、登記は法務局・司法書士に確認するのが確実です。

  • これから設立する → 定款作成時に事業目的へ古物の売買を含める(後からの変更登記が不要になる)。
  • 既存の法人で申請する → 登記事項証明書の「目的」に古物の記載があるか確認。あれば追加対応は不要。
  • 目的に記載がない → 定款変更を決議し、目的の変更登記を行ってから(または並行して)許可申請する。

税金・信用・引き継ぎで見る損得

手続きの手間だけでなく、長く続ける視点でも個人・法人で差が出ます。ざっくり言えば、利益が小さいうちは個人(低い税率帯・身軽さ)、利益が大きくなるほど法人(一定税率・経費や役員報酬の設計)が有利になりやすい、という関係です。加えて法人は企業間取引での信用や、代表が代わっても事業を続けられる継続性・承継のしやすさで優れます。ただし「どの利益水準で法人が有利になるか」は役員報酬・社会保険・会計コストなど個別事情で大きく変わるため、具体的な分岐点は税理士に確認するのが確実です。

判断材料の分かれ目(目安)
観点 個人が向く 法人が向く
税金 利益が小さいうち(低い税率帯) 利益が大きい(一定税率が効く帯)
信用 個人間・小規模の取引が中心 企業間取引・継続仕入で信用を見られる
体制 1人で完結させたい 従業員を雇う・営業所を増やす
事業の継続 本人ありきで完結 代表交代・承継・売却まで見据える

税率の具体的な数値や有利・不利の分岐は、所得・報酬・社会保険料の水準で変わります。本記事では断定を避けます。数字を根拠に判断したい場合は、直近の売上・利益の見込みと想定する役員報酬を用意したうえで、税理士または税務署の窓口で個別に試算してもらうのが確実です。同じ条件で複数の税理士に試算を依頼すると、法人化に踏み切る時期の考え方の幅も見えます。

「個人で取ってから法人化」は取り直しが必要

実務でよくあるのが「まず個人で始めて、軌道に乗ったら会社にする」流れです。ここに絶対に外せない注意点があります。個人と法人は法律上「別の人格」で、個人の許可を法人にそのまま引き継ぐことはできません。個人で許可を取った人が会社の代表になっても、その許可で法人として古物営業はできず、法人名義で新規に取り直しが必要です。個人の許可を法人で使えば「名義貸し」とみなされ、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になり得ます(古物営業法の名義貸し禁止)。取り直し=ゼロからやり直し、ではありますが、営業を止めずに切り替える順番があります。

ポイント:先に個人許可を返納しない。法人許可が下りるまで営業を止めないために、切り替えは「新しい許可が出てから古い許可を返す」順番を守ります。

無許可の空白期間を作らずに個人から法人へ移行する手順は、次のとおりです。日数は目安で、管轄や書類の状態で前後します。

  1. 会社を設立する。定款の事業目的に古物の売買を入れておく(前章参照)。
  2. 法人名義で古物商許可を新規に申請する。この時点で個人の許可はまだ返納しない。
  3. 審査期間(約40日〜が目安)は、個人許可のまま営業を継続する。
  4. 法人の許可が交付されたら、個人許可を返納する。これで空白期間ゼロで移行完了。

先に個人許可を返してしまうと、法人許可が下りるまで無許可状態になります。順番を逆にしないことが最大のコツです。切り替えの段取りや標識・古物台帳の名義変更など不安があれば、申請前に管轄警察署へ相談しておくと安心です。名義や記載事項の変更手続きは古物商許可の変更・書換えも参考になります。

役員が複数・一人社長のときの注意点

法人申請では役員全員が欠格事由に当たらないことが条件です。役員のうち1人でも欠格事由(一定の前科・破産手続開始の決定を受けて復権していない・暴力団関係など)に該当すると、法人として許可が下りません。だからこそ、書類は役員全員分をそろえ、事前に全員をチェックする必要があります。役員が自分1人だけの「一人社長」でも法人申請は可能ですが、その場合も定款・登記事項証明書といった法人固有の書類は必要で、個人より書類は増えます。監査役を含め、誰が「役員」に当たるかは管轄の判断もあるため、事前相談で確認しておくと確実です。

役員・管理者まわりでつまずきやすい点を整理します。

  • 役員全員の書類が必要。非常勤役員や名前だけの役員も対象になり得ます。誰まで含めるかは事前相談で確定を。
  • 管理者は営業所ごとに1人。役員が兼ねることもできますが、要件は管理者の要件で確認してください。
  • 欠格事由は1人でもアウト。該当者がいると法人全体で不許可になるため、申請前の全員チェックが欠かせません。

よくある質問

Q. 個人と法人で許可の効力は違いますか?
できること(古物の売買)は同じで、許可の「強さ」に差はありません。違うのは申請の手間・税金・信用・引き継ぎ方です。どちらで取っても営業できる範囲は変わりません。
Q. 個人で取った許可を、法人にそのまま引き継げますか?
引き継げません。個人と法人は別人格のため、法人で営業するには法人名義で新規に取り直しが必要です。個人許可を法人で使うと名義貸し(3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象)とみなされ得ます。営業を止めない切り替え手順は本文をご覧ください。
Q. 一人社長(役員が自分だけ)でも法人申請できますか?
できます。ただし役員が自分1人でも、定款の写しや登記事項証明書など法人固有の書類が必要で、書類は個人申請より増えます。
Q. 個人事業主(屋号あり)は個人・法人どちらで申請しますか?
個人で申請します。個人事業主は屋号があっても法律上は「個人」です。法人ではないため、定款や登記事項証明書は不要です。
Q. 法人の役員に欠格事由のある人がいるとどうなりますか?
役員のうち1人でも欠格事由に該当すると、法人として許可が下りません。申請前に役員全員が欠格事由に当たらないかを確認する必要があります。
Q. 法人申請の手数料は個人より高いですか?
申請手数料は個人・法人とも19,000円で同額です。差が出るのは手数料ではなく、役員全員分の住民票・身分証明書などの取得実費と、書類をそろえる手間です。

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