廃車の委任状は、埋める欄は多くありません。持ち主(委任者)が自分でやるのは、住所・氏名の記入と実印の押印だけ。受任者欄・委任事項・車両情報は代行する人や業者が埋めても有効です。差戻し(受理されない)の大半は「住所が印鑑証明書と一字違う」「実印でなく認印を押した」「永久抹消と一時抹消の文言を取り違えた」の3つ。逆にここさえ外さなければ運輸支局の窓口で止まりません。以下、永久抹消・一時抹消・移転抹消(解体をともなう名義変更)の3ケースごとに、そのまま写せる記入例と項目別の注意点を、九州運輸局と軽自動車検査協会の公表内容にもとづいて整理します。
「委任状を初めて書く」「一度出したら差戻された」という方に向けて、結論から言うと、手書きの白紙に必須項目をすべて書けば委任状として有効です。決まった様式でなくても構いません。ただし記入漏れが起きやすいので、印刷様式に書き込むほうが安心です。まずは、あなたの車が「委任状」なのか「申請依頼書」なのかを分けるところから始めます。
まず分岐:あなたの車は「委任状」?「申請依頼書」?
最初に確認すべきは車種です。普通車(白・3・5ナンバー等)は「委任状」+実印+印鑑証明書を使い、提出先は運輸支局。軽自動車(黄ナンバー)は「申請依頼書」で、実印も印鑑証明書も不要、提出先は軽自動車検査協会です。名前も様式も窓口も違うため、軽の人が委任状を作っても軽自動車検査協会では使えません。ここを取り違えると出直しになるので、書き始める前に必ず分けてください。
| 普通車(白ナンバー等) | 軽自動車(黄ナンバー) | |
|---|---|---|
| 使う書類 | 委任状 | 申請依頼書 |
| 押印 | 実印が必要 | 不要(署名・記名のみ/2021年〜) |
| 印鑑証明書 | 必要(発行3か月以内) | 不要 |
| 提出先 | 運輸支局(福岡・北九州・筑豊・久留米) | 軽自動車検査協会 |
軽の申請依頼書については後述します(軽自動車の申請依頼書は押印不要)。ここから先はまず普通車の委任状を中心に説明します。
委任状の必須項目と「誰が書くか」
委任状の用紙は、上下で書く人が分かれます。持ち主(委任者)が書くのは、自分の住所・氏名と実印の押印だけ。受任者欄・委任事項・車両情報は、実際に窓口へ行く人や依頼先の業者が埋めても問題ありません。九州運輸局も「所有者本人が申請できない場合、印鑑証明書と同一の実印を押した委任状が必要」としており、押印は委任者本人の実印であることが要件です(出典:九州運輸局 申請書類の入手方法)。
| 項目 | 書く人 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| ① 委任者(持ち主)住所・氏名 | 持ち主 | 印鑑証明書のとおりに転記。マンション名・部屋番号・番地の表記(丁目/ハイフン)も省略せず一致させる |
| ② 委任者の押印 | 持ち主 | 印鑑証明書と同じ実印。認印・シャチハタは不可 |
| ③ 受任者(代行者)住所・氏名 | 代行者/業者 | 実際に窓口へ行く人。業者依頼なら業者の情報。押印は不要 |
| ④ 委任事項 | 代行者/業者 | 手続き名を正確に(永久抹消か一時抹消かで文言が違う。後述) |
| ⑤ 車両情報 | 代行者/業者 | 車検証どおりの自動車登録番号または車台番号 |
| ⑥ 作成年月日 | どちらでも | 空欄だと差戻しの原因。記入忘れに注意 |
手続き別・そのまま写せる記入例
委任状で手続きの種類ごとに変わるのは「委任事項」の文言だけです。委任者欄・実印・作成日の書き方はどのケースも共通。ここでは廃車で使う3パターン(永久抹消/一時抹消/移転抹消)の委任事項を、そのまま写せる形で示します。永久抹消と一時抹消は必要な手続きが別物なので、文言を間違えると窓口で受理されません。「解体してもう乗らない=永久抹消」「車は残すが公道は走らない=一時抹消」で選びます。
① 永久抹消登録(解体してナンバーを消す)
委任事項:下記自動車の永久抹消登録申請ならびに自動車重量税還付申請および還付金の受領に関する一切の権限
自動車登録番号:福岡 500 あ ○○○○(または車台番号 ○○○○-○○○○○○)
───
委任者(持ち主)住所:福岡県○○市○○町○丁目○番○号 ○○マンション○○号室
委任者 氏名:○○ ○○ (実印)
作成年月日:令和○年○月○日
永久抹消では、解体を証明する移動報告番号(使用済自動車引取証明書/リサイクル券で確認)を申請書に記載します。車検の残存期間が1か月以上あれば自動車重量税の還付を同時申請でき、この受領を代行者に任せる場合は上のように委任事項へ還付・受領の文言を入れておくと別紙の還付用委任状が不要になります(出典:九州運輸局)。自分で還付金を受け取るなら、還付項目は省いて構いません。
② 一時抹消登録(しばらく乗らない・名義そのまま)
委任事項:下記自動車の一時抹消登録申請に関する一切の権限
※登録番号・委任者欄・実印・作成日の書き方は永久抹消と同じ。違うのは委任事項の文言だけです。
③ 移転抹消登録(名義を移してから廃車する)
委任事項:下記自動車の移転抹消登録申請に関する一切の権限
※譲渡や相続で名義を動かしつつ廃車(永久抹消)するケース。旧所有者と新所有者、双方の実印を押した委任状が必要になることがあります(誰が窓口へ行くかで要否が変わる)。別途譲渡証明書(旧所有者の実印)も要ります。
移転抹消は「新所有者が手続きに行くなら旧所有者の委任状」「第三者(業者など)が行くなら新・旧双方の委任状」と、行く人によって必要な委任状が変わります。それぞれ実印での押印が必要です(出典:九州運輸局 移転登録関係)。相続がからむ場合は戸籍など追加書類も出てくるため、迷ったら管轄の運輸支局か専門家に確認してください。名義を移さず故人名義のまま廃車できるケースもあります(詳しくは相続した車の廃車)。
実印・印鑑証明書の要否と有効期限
普通車の委任状には実印(印鑑登録した印)と発行後3か月以内の印鑑証明書が必須です。認印・シャチハタは不可。九州運輸局は「委任状には印鑑証明書と同一の実印が押されていること」を要件としています。所有者本人が窓口へ行くなら委任状は省略できますが、その場合も実印の持参が必要です(出典:九州運輸局)。軽自動車はこのどちらも不要です。
- 実印:印鑑登録した印。委任状の印影は印鑑証明書と同一であること。
- 印鑑証明書:発行から3か月以内のもの。期限切れは差戻しの定番。
- 住所がつながらないとき:車検証の住所と印鑑証明書の住所が違う場合、引っ越し1回なら住民票、2回以上なら戸籍の附票(いずれも発行3か月以内)でつなぎます(出典:九州運輸局)。
- 法人名義:法務局発行の印鑑証明書(発行3か月以内)と代表者印(丸印)。角印(社判)は不可。委任者欄は法人名・本店所在地・代表者名で記入。
差戻し(受理されない)原因トップ5と対処
窓口で弾かれる理由はほぼ決まっています。競合記事ではバラバラに書かれがちな「差戻しの原因」を、実務で多い順に一表にまとめました。提出前にこのまま指差し確認してください。5つのうち上位3つ(住所の不一致/実印でない/文言の取り違え)で大半を占めます。
| つまずき | 正しい対処 |
|---|---|
| 住所・氏名が印鑑証明書と少しでも違う(番地の略・部屋番号抜け) | 証明書を見ながら一字一句そのまま転記 |
| 実印でなく認印・シャチハタを押した | 印鑑登録した実印で押し直す(印影は印鑑証明書と同一に) |
| 永久抹消/一時抹消/移転抹消の文言を取り違えた | 解体=永久抹消、車を残す=一時抹消、名義を移して廃車=移転抹消 |
| 印鑑証明書が発行から3か月を超えていた | 普通車は発行3か月以内のものを再取得 |
| 修正テープ・修正液で直した/作成日が空欄 | 二重線+実印で訂正印。作成年月日は必ず記入 |
書き間違い・紛失したとき
修正テープ・修正液はどちらも使えません。間違えた箇所は二重線を引き、その上に委任者の実印で訂正印を押します。訂正が多くて読みにくくなるなら、新しい用紙に書き直すのが確実。委任状を紛失した場合も、新しい用紙に同じ内容を作り直せば再利用できます(実印・印鑑証明書はあらためて準備)。
「訂正印も実印でないといけないの?」という疑問がよくありますが、委任状の押印が実印である以上、訂正印も同じ実印を使います。別の印だと訂正そのものが無効と見なされ、結局差戻しになります。
軽自動車の申請依頼書は押印不要(2021年〜)
軽自動車は普通車と扱いが大きく違います。委任状にあたる書類は「申請依頼書」で、2021年1月4日以降、押印(認印)は廃止されました。現在は氏名・住所を記入すれば受理され、実印も印鑑証明書も不要です(出典:軽自動車検査協会 申請書類および記入例)。「軽は認印でOK」という古い案内が今も出回っていますが、正しくは押印そのものが不要です。
- 様式:軽自動車検査協会が「申請依頼書」のPDFを公開。窓口でも入手可。
- 提出先:軽自動車検査協会(福岡・北九州・筑豊・久留米)。運輸支局ではありません。
- 省略できる場合:自分で手続きする、または依頼者と代行業者の間で了承があれば、申請依頼書の提出自体を省ける運用があります。
- ローン・ディーラー名義:所有者がローン会社等の場合、会社側の様式・押印を求められることがあるため事前確認を。
- 旧様式(押印欄あり)の用紙も当面のあいだ使えます。
軽自動車の窓口や手続き全体は軽自動車検査協会の一覧と窓口もあわせてご覧ください。
よくある質問
- Q. 受任者欄が空欄でも大丈夫?
- 業者に依頼し、その業者が受任者として記入する場合は、空欄のまま渡しても問題ありません。ただし家族など特定の人に頼むなら、その人の住所・氏名を書いておくほうが確実です。
- Q. 持ち主が引っ越して住所が車検証と違うときは?
- 委任状の住所は現在の印鑑証明書の住所で書きます。車検証の住所とつながらない場合は、引っ越し1回なら住民票、2回以上なら戸籍の附票(発行3か月以内)が別途必要です。引っ越し回数が多い人は窓口で確認してください。
- Q. 法人名義の車は?
- 普通車は代表者印(丸印)を押し、法務局発行の印鑑証明書(発行3か月以内)を添えます。角印(社判)は不可。委任者欄は法人名・本店所在地・代表者名で記入します。軽自動車は法人でも押印不要ですが、申請依頼書を求められる場合があります。
- Q. 委任状のほかに要る書類は?
- 名義変更をともなう移転抹消では譲渡証明書(旧所有者の実印)が別途必要です。永久抹消では解体を示す移動報告番号(使用済自動車引取証明書)が関わります。車の状態(解体する/名義を移す)で必要書類が変わるため、全体像は廃車に必要な書類一覧で確認してください。
- Q. 永久抹消か一時抹消か、そもそも判断がつかない
- 「解体してもう乗らない=永久抹消」「車体は残すが公道は走らせない=一時抹消」が目安です。還付金や税の戻り方も変わります。違いは永久抹消と一時抹消の違いで詳しく整理しています。
- Q. 用紙はどこで手に入る?
- 普通車の委任状は国土交通省の自動車検査・登録ポータル、軽自動車の申請依頼書は軽自動車検査協会から様式を入手できます。手書きの白紙でも必須項目をすべて満たせば有効ですが、記入漏れ防止のため印刷様式への書き込みが安心です。
提出前チェックリスト
- 普通車は「委任状」、軽自動車は「申請依頼書」を選んだ
- 住所・氏名を印鑑証明書のとおり一字一句で書いた
- 実印を押した(認印・シャチハタではない/軽は押印不要)
- 印鑑証明書は発行3か月以内(軽は不要)
- 委任事項が手続き(永久抹消/一時抹消/移転抹消)と一致している
- 自動車登録番号または車台番号を車検証どおりに書いた
- 作成年月日を記入した
- 訂正は二重線+実印の訂正印で直した
- 移転抹消なら譲渡証明書、永久抹消なら移動報告番号もそろえた
代行を頼むときに確認しておくこと
委任状は実印を押した書類で、印鑑証明書とセットで渡すと、その車の手続きを相手に任せる効力を持ちます。渡す前に委任事項の欄が空白のまま(いわゆる白紙委任)になっていないかを必ず確かめてください。永久抹消か一時抹消かを決め、手続き名を書き込んだ状態で渡すのが安全です。受任者欄は業者側が埋める運用が一般的ですが、委任事項まで空欄にしておく必要はありません。
代行手数料、還付金(自動車重量税・自賠責)の扱い、書類の返却時期は業者ごとに条件が異なります。同じ条件で2〜3社に手順と費用を確認して比べると、負担の差が把握しやすくなります。制度上の可否そのもの(相続・ローン名義・住所のつながり)は、管轄の運輸支局または軽自動車検査協会に事前確認するのが確実です。
関連ページ:廃車に必要な書類一覧/永久抹消と一時抹消の違い/運営者情報
出典:九州運輸局「申請書類の入手方法について(自動車登録関係)」/九州運輸局 移転登録・抹消登録関係/軽自動車検査協会「申請書類および記入例」(押印廃止は2021年1月4日〜)/国土交通省 自動車検査・登録ポータル。本ページは2026年7月時点の公的情報にもとづく目安であり、個別の可否は管轄窓口・専門家にご確認ください。