結論:1人で始めるなら「個人」、複数人を雇う・利益が安定して節税したい・取引先の信用が要るなら「法人」。許可の手数料はどちらも19,000円で同じですが、法人は提出書類が役員の人数分ふくらみ、審査も少し長くなります。そして最重要ポイントが1つ——個人で取った許可を、あとから法人にそのまま引き継ぐことはできません。法人にするなら、法人名義で新規に取り直しが必要です(名義変更・承継は不可)。
3秒で判断:あなたはどっち?
- 今は1人・小さく始めたい・とにかく早く許可がほしい → 個人
- 従業員を雇う/年間の利益が大きくなる見込み/企業間取引で信用を見られる → 法人
- 「個人で取ってから、軌道に乗ったら法人化」も実務では一般的(ただし法人化時は取り直し)
個人と法人、何がどう違うのか(早見表)
許可そのものは「個人用」「法人用」という別物があるわけではなく、許可を受ける主体(人)が個人か法人かが違うだけです。やれること(古物の売買)は同じですが、申請の手間・税金・信用・事業の引き継ぎ方が変わります。
| 項目 | 個人で取得 | 法人で取得 |
|---|---|---|
| 申請手数料 | 19,000円 | 19,000円(同額) |
| 標準処理期間 | 約40日(土日祝除く) | 約40日〜(書類が多い分、準備に時間がかかりやすい) |
| 提出書類を出す対象 | 本人+管理者(兼ねれば1人分) | 役員全員+管理者全員分 |
| 法人固有の追加書類 | 不要 | 定款の写し・登記事項証明書 ほか |
| 税金 | 所得税(累進・最大45%) | 法人税(おおむね一定・実効で約23%台) |
| 取引先からの信用 | 個人名での取引 | 法人名で取引でき、信用を得やすい場面がある |
| 事業の引き継ぎ | 廃業・相続時は原則あらためて申請が必要 | 株式譲渡などで法人ごと引き継ぎやすい |
手数料・期間は2026年6月時点の一般的な運用。手数料は不許可でも返還されません。最終的な期間・必要書類は申請先の警察署(公安委員会)で必ず確認してください。
出典:古物営業法(e-Gov法令検索)
必要書類の違い:法人は「役員の人数分」増える
申請の重さを左右するのは、ほぼ「書類の量」です。個人はシンプル。法人は役員全員と管理者全員について同じ一式を集めるため、人数が多いほど準備が大変になります。
| 書類 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 許可申請書 | ○ | ○(法人用の様式) |
| 住民票(本籍記載) | 本人+管理者 | 役員全員+管理者 |
| 身分証明書(本籍地の市区町村で取得) | 本人+管理者 | 役員全員+管理者 |
| 略歴書 | 本人+管理者 | 役員全員+管理者 |
| 誓約書 | 本人+管理者 | 役員全員+管理者 |
| 定款の写し(事業目的の記載が必要) | 不要 | ○ |
| 登記事項証明書(3か月以内) | 不要 | ○ |
| 営業所の使用承諾書・URLの使用権疎明(ネット販売時) | 該当時 | 該当時 |
「身分証明書」は運転免許証ではなく、本籍地の市区町村が発行する公的書類(破産手続や後見の有無を証明するもの)です。混同に注意。
【見落とし注意】法人は定款の「事業目的」に古物が入っているか
法人申請でいちばんつまずくのがここです。定款の事業目的に古物の売買を営む趣旨が書かれていないと、原則として許可は下りません。
記載例(趣旨):「古物営業法に基づく古物商」「古物の売買」など、古物を扱うことが分かる文言。
未記載なら、定款変更(株主総会の決議)→ 登記の変更が必要になり、その分だけ時間と費用がかかります。会社を作る段階なら、最初から目的に入れておくと二度手間を防げます。
税金・信用・引き継ぎ:判断材料はここで分かれる
手続きの手間だけでなく、長く続ける視点でも差が出ます。とくに利益が大きくなるほど法人の税率メリットが効いてくるのがポイントです。
| 観点 | 個人が向く | 法人が向く |
|---|---|---|
| 税金 | 利益が小さいうち(累進税率が低い帯) | 利益が大きい(一定税率の方が有利になる帯) |
| 信用 | 個人間・小規模の取引が中心 | 企業間取引・継続仕入で相手に信用を見られる |
| 体制 | 1人で完結 | 従業員を雇う・営業所を増やす |
| 事業の継続 | 本人ありきで完結 | 代表が代わっても法人として継続・売却しやすい |
どの利益水準で法人が有利になるかは、役員報酬・社会保険・会計コストなど個別事情で変わります。具体的な分岐点は税理士に確認するのが確実です。
「個人で取ってから法人化」したい人がいちばん注意すること
実務でよくあるのが「まず個人で始めて、軌道に乗ったら会社にする」流れです。ここに絶対に外せない注意点があります。
個人の許可は、法人にそのまま引き継げません。
個人と法人は法律上「別の人格」。個人で許可を取った人が会社の代表になっても、その許可で法人として古物営業はできません。法人として営業するなら、法人名義で新規に取り直しが必要です。個人許可を法人で使うと「名義貸し」とみなされ、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。
許可の「空白期間」を作らない切り替え手順
取り直しといっても、営業を止める必要はありません。順番を守れば無許可の期間を作らずに移行できます。
- 会社を設立する(定款の事業目的に古物の売買を入れておく)。
- 法人名義で新規の古物商許可を申請する。このとき個人の許可はまだ返納しない。
- 法人の許可が下りる(約40日〜)。営業は個人許可のまま継続。
- 法人許可が出たら、個人許可を返納する。これで空白期間ゼロで移行完了。
先に個人許可を返してしまうと、法人許可が下りるまで無許可状態になります。順番を逆にしないことが最大のコツ。心配なら申請前に管轄警察署へ相談しておくと安心です。
よくある質問
個人と法人で許可の効力は違いますか?
許可でできること(古物の売買)は同じです。違うのは申請の手間・税金・信用・引き継ぎ方であって、許可の「強さ」に差はありません。
1人で会社(一人社長)でも法人申請はできますか?
できます。ただし役員が自分1人でも、法人特有の定款・登記事項証明書が必要になり、書類は個人より増えます。
個人事業主(屋号あり)は個人申請でいいですか?
はい。個人事業主は法律上「個人」です。屋号があっても個人として申請します。
法人の役員に欠格事由のある人がいるとどうなりますか?
役員のうち1人でも欠格事由(一定の前科・破産手続中など)に該当すると、法人として許可が下りません。役員全員のチェックが必要です。
個人か法人かの判断、書類集めや定款の文言で迷ったら。古物まわりの実務でつまずきやすいポイントを、状況に合わせてご案内します。具体的なご相談はこちらのお問い合わせからどうぞ。
本記事は2026年6月15日時点の一般的な情報です。手数料・必要書類・運用は管轄の警察署(公安委員会)により異なる場合があります。最新・正確な要件は申請先で必ずご確認ください。