結論:古物商許可に「名義変更」という制度はありません。変える内容によって、手続きは「変更届出・書換申請(許可はそのまま)」か「新規許可申請(許可を取り直す)」のどちらかに分かれます。見分け方は1つ――営業の主体(許可の名義人)が変わるかどうかです。
まず3秒で判定:あなたのケースはどっち?
「主体が同じまま中身だけ変わる」なら届出・書換で済みます。「主体そのものが入れ替わる」なら新規許可になります。
| あなたのケース | 主体は | 手続き | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 結婚・離婚で氏名が変わった | 同じ人 | 書換申請 | 1,500円 |
| 引っ越し(個人の住所変更) | 同じ人 | 書換申請 | 1,500円 |
| 店舗・営業所を移転する | 同じ主体 | 変更届出(事前) | 無料 |
| 法人の代表取締役が交代した | 同じ法人 | 書換申請+届出 | 1,500円 |
| 法人の役員・管理者が変わった | 同じ法人 | 変更届出 | 無料 |
| 個人事業から法人化した | 別の主体 | 新規許可申請 | 19,000円 |
| 事業を他人へ譲った/買った | 別の主体 | 新規許可申請 | 19,000円 |
| 許可者が亡くなり相続した | 別の主体 | 新規許可申請 | 19,000円 |
下段3つ(法人化・譲渡・相続)が「主体が変わる=取り直し」のグループです。ここを「名義変更で済む」と誤解する人が最も多いため、まず自分がどちらのグループかを確かめてください。
なぜ「名義変更」ができないのか
古物商許可は、運転免許証と同じくその人・その法人だけに与えられた許可(一身専属)です。他人に貸したり、譲ったり、相続でそのまま引き継いだりはできません(古物営業法第9条で名義貸しは禁止)。
だから「人や法人そのものが入れ替わる」ときは、新しい主体がゼロから許可を取り直し、古い主体は廃止の届出を出す、という流れになります。「名義を書き換えるだけ」では済まないのはこのためです。
つまずきやすい:「変更届出(無料)」と「書換申請(1,500円)」は別物
同じ主体内の変更でも、手続きは2種類に分かれます。混同しやすいので整理します。
| 区分 | 何を変えるとき | 手数料 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 許可証の書換申請 | 許可証に書いてある事項(氏名・住所・法人の代表者など) | 1,500円 | 変更の日から14日以内(法人登記がからむと20日以内) |
| 変更届出(事後) | 許可証に載らない事項(役員・管理者の交代、取扱品目の変更など) | 無料 | 変更の日から14日以内(法人登記がからむと20日以内) |
| 変更届出(事前) | 営業所の新設・移転・廃止・名称変更 | 無料 | 変更の3日前まで |
ポイントは2つ。営業所の移転だけは「事前(3日前まで)」で、他は「事後(14日以内)」です。そして許可証に印字された事項を変えるときだけ1,500円がかかります。法人の代表者交代のように「許可証の記載(書換1,500円)+役員変更の届出(無料)」を2つ同時に出す場面もあります。
ケース別の手順
結婚・離婚で氏名が変わった(個人)
許可はそのまま有効です。氏名は許可証の記載事項なので書換申請(1,500円)を14日以内に。本籍記載の住民票など、氏名変更が確認できる書類を添えます。新規取り直しは不要です。
個人事業から法人化した(法人成り)
個人と会社は別の主体です。届出では済まず、会社設立の登記完了後に法人として新規許可申請(19,000円・審査の目安は約40日)。あわせて個人の許可は廃止届出を出します。法人の許可が下りるまでは個人許可で営業を続け、空白期間をつくらないのが実務上の安全策です。
許可者が亡くなった(相続)
古物商許可は相続で承継できません。事業を継ぐ相続人は自分名義で新規許可申請(19,000円)を行い、亡くなった方の許可は廃止届出を出します。許可が下りるまでの間は、相続人が無許可で営業しないよう注意が必要です。
事業を譲渡した・買い取った
譲り受けた側が新規許可申請(19,000円)、譲った側が廃止届出。許可そのものを売買・譲渡することはできません。
出さないとどうなる(罰則)
| 違反 | 罰則 |
|---|---|
| 変更届出・書換申請を怠る/虚偽 | 10万円以下の罰金 |
| 許可を取り直さず営業を続ける(無許可営業) | 3年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 |
とくに法人化・相続・譲渡で「名義変更で済む」と誤解したまま営業を続けると、形式上は無許可営業になり得ます。判定に迷ったら、自分のケースが上段(届出)か下段(新規)かを先に確かめてください。
提出先と確認の進め方
提出先は、主たる営業所を管轄する警察署の生活安全課(経由して公安委員会へ)です。様式や添付書類の細部、遅延理由書の要否は都道府県で運用差があるため、最終確認は管轄の警察署で行うのが確実です。手続きの判定や書類準備で迷うときは、当サイトのお問い合わせからご相談ください。
よくある質問
Q. 「名義変更」と検索しましたが、その手続きはありませんか?
制度名としては存在しません。実際に必要なのは、主体が同じなら「変更届出・書換申請」、主体が変わるなら「新規許可申請+廃止届出」です。
Q. 代表者が変わるだけなら新規許可は要りますか?
不要です。法人そのものは同じなので、許可証の書換申請(1,500円)と役員変更の届出(無料)で対応します。
Q. 個人事業の許可を、そのまま家族に引き継げますか?
できません。家族が自分名義で新規許可を取り、元の許可は廃止届出を出します。
出典:古物営業法(e-Gov 法令検索)/警察庁・各都道府県警察(古物商の変更届出・書換申請の案内)。手続きの細部は管轄警察署の最新案内をご確認ください。