結論:古物商の「行商(ぎょうしょう)」とは、許可を受けた営業所の外で古物を売買する取引のこと。出張買取・催事・骨董市・お客様宅への訪問買取は、すべて行商にあたります。行商をするなら、許可申請書で「行商する」を選び、現場では本人=古物商許可証/従業員=行商従業者証を必ず携帯します。携帯・提示を怠ると10万円以下の罰金(古物営業法第35条)。迷ったら「行商する」で申請するのが正解です(デメリットは実質なし)。
3秒でわかる|あなたは行商の届出が必要か
| あなたの取引スタイル | 行商に該当? | 申請欄 | 現場で携帯 |
|---|---|---|---|
| お客様の自宅へ出張買取に行く | 該当する | 「行商する」 | 許可証/行商従業者証 |
| 催事・骨董市・フリマ会場に出店 | 該当する | 「行商する」 | 許可証/行商従業者証 |
| 古物市場(業者間オークション)で仕入れる | 該当する | 「行商する」 | 許可証/行商従業者証 |
| 自分の店舗・事務所の中だけで売買する | 該当しない | どちらでも可 | 店内のため不要 |
| ネット販売のみ(発送は店舗から) | 該当しない | どちらでも可※ | ― |
※将来、催事出店や古物市場での仕入れの可能性が少しでもあるなら「行商する」で申請しておくと後の手続きが省けます。
行商とは|古物営業法での意味
行商とは、古物商が、自分の届け出た営業所以外の場所へ出向いて行う古物の取引を指します。読み方は「ぎょうしょう」。古物営業法では、古物商の営業形態の一つとして位置づけられています。
ポイントは「場所」です。営業所の外で行う取引はすべて行商。逆に、自分の店舗内で完結する売買は行商ではありません。出張買取・訪問買取・催事出店・古物市場での仕入れが、典型的な行商の場面です。
「行商する/しない」は申請書のどちらを選ぶべきか
古物商許可の申請書には「行商する/行商しない」を選ぶ欄があります。結論は明快で、原則「行商する」を選びます。
| 「行商する」を選ぶと | 「行商しない」を選ぶと | |
|---|---|---|
| 営業所外での売買 | できる | できない |
| 出張買取・訪問買取 | できる | できない |
| 催事・骨董市への出店 | できる | できない |
| 古物市場(業者間オークション)での仕入れ | できる | 参加できない |
| このために生じるデメリット | 特になし | 仕入れ・販路が広がらない |
「行商する」を選ぶ最大のメリットは、古物市場(業者間のせり市)に参加できることです。仕入れの幅が大きく広がります。一方で「行商する」を選んだことによる不利益は実質的にありません。迷ったら「行商する」——これが鉄則です。
もし「行商しない」で取得済みでも、後から変更届出で「する」に切り替えられます。許可証の書換えが必要になる場合の手数料は1,500円です。窓口・必要書類は管轄の警察署(公安委員会)に事前確認してください。
現場で携帯するもの|本人と従業員で違う
行商の場面で取引相手から求められたら、その場で身分を証明する書類を提示する義務があります(古物営業法第11条)。本人と従業員で持つものが異なります。
| 誰が行商するか | 携帯・提示するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 古物商本人(許可名義人) | 古物商許可証 | 古物営業法 第11条第1項 |
| 従業員(雇われて行商する人) | 行商従業者証 | 古物営業法 第11条第2項 |
従業員に許可証そのものを持たせることはできません。従業員が出張買取や催事を担当するなら、その人数分の行商従業者証を用意する必要があります。
行商従業者証の作り方|仕様(自作も可)
行商従業者証は、決められた様式(古物営業法施行規則 第10条・別記様式第12号)を満たせば、市販品でも自作でも構いません。仕様は次のとおりです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| サイズ | 縦 5.5cm × 横 8.5cm |
| 素材 | プラスチック、または同等の耐久性があるもの |
| 表面に記載 | 「行商従業者証」の文字/従業者の写真・氏名・生年月日 |
| 裏面に記載 | 古物商の氏名(名称)・住所/許可した公安委員会名/許可証番号/主として取り扱う古物の区分 |
記載漏れや様式違いは「不所持」と同じ扱いになりかねません。発行前に項目をひと通り照合しておくと安全です。
守らないとどうなるか|2つの違反と罰則
行商まわりで特に注意すべき違反は、「書類を携帯しない」ことと、「買い取ってはいけない場所で買い取る」ことの2つです。罰則の重さが大きく違います。
| 違反 | 内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 携帯・提示義務違反 | 行商中に許可証/行商従業者証を持たない・提示しない(第11条違反) | 10万円以下の罰金(第35条) |
| 取引場所の制限違反 | 買受けを認められた場所以外で古物を買い取る(第14条違反) | 1年以下の懲役 または 50万円以下の罰金(第31条) |
特に見落としやすいのが取引場所の制限です。古物商が一般の方から古物を買い受ける場所は、原則として「自分の営業所」か「相手方の住所・居所」に限られます(他の古物商との取引を除く)。たとえば喫茶店やファミレスで買い取るのは、行商中であってもこの制限に触れる可能性があります。出張買取は必ずお客様のご自宅などで行うのが基本です。
取引シーン別|行商の運用ポイント
| シーン | 携帯 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出張買取(自宅訪問) | 許可証/行商従業者証 | 買受けは相手方の住所で。台帳記載・本人確認は必須。 |
| 催事・デパート催事 | 許可証/行商従業者証 | 会場での買受けは原則「販売・展示」中心と整理し、買取は要確認。 |
| 骨董市・フリーマーケット出店 | 許可証/行商従業者証 | 一般客からの買受けは場所の制限に注意。 |
| 古物市場(業者間せり) | 許可証/行商従業者証 | 「行商する」での申請が参加の前提。 |
訪問買取とクーリング・オフ
お客様の自宅へ訪問して買い取る「訪問買取」は、古物営業法とは別に特定商取引法の規制対象になる場合があります。事業者は、契約時の書面交付やクーリング・オフ(一定期間内の申込みの撤回)の説明など、別途の義務を負うことがあります。出張・訪問で買取を行うなら、古物営業法だけでなく特定商取引法の確認も欠かせません。
よくある質問
Q. 行商従業者証は誰が作るの?
古物商(雇用主)が用意します。様式を満たせば自作も市販品も可。従業員が個人で勝手に作るものではありません。
Q. ネット販売だけなら「行商する」は不要?
店舗から発送するだけなら行商には当たりません。ただし将来、催事出店や古物市場での仕入れの可能性があるなら「行商する」で申請しておくと手続きが省けます。
Q. 「行商しない」で取得済み。市場に参加したくなったら?
変更届出で「行商する」に切り替えられます。書換えが必要な場合の手数料は1,500円。管轄警察署で必要書類を確認してください。
まとめ
- 行商=営業所の外で行う古物の売買。出張買取・催事・骨董市・市場仕入れが該当。
- 申請は原則「行商する」。最大のメリットは古物市場に参加できること。デメリットは実質なし。
- 現場では本人=許可証、従業員=行商従業者証を携帯・提示。怠ると10万円以下の罰金。
- 買受けは「営業所」か「相手方の住所」で。場所の制限違反は罰則が重い(最大で1年以下の懲役)。
正確な手続きや個別ケースの判断は、管轄の警察署(公安委員会)や条文で必ずご確認ください。条文の原文は 古物営業法(e-Gov法令検索) で確認できます。許可・行商の具体的な進め方について相談したい方は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。